私立アメコミ高校

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『動物戦隊ジュウオウジャー』を観た

スーパー戦隊シリーズ50周年を記念して勝手にスタートした制覇企画、第4弾である。

 

本来ならば『太陽戦隊サンバルカン』を取り上げるべき順番なのだが、ちょうどYouTubeの公式チャンネルで配信されていたため、実は『ジャッカー電撃隊』の頃から並行して観ていたのだ。

 

生まれて以降の戦隊を観れていないのは今作とあと一つ、こちらもちょうど配信されており佳境のため、『サンバルカン』は第6弾、ということになりそうだ。

 

さて今回の本題に入ろう。スーパー戦隊シリーズ40周年、更に総エピソード数2000の大台を迎えた『動物戦隊ジュウオウジャー』ではどのような物語が描かれ、またそれがどういった流れを産む形になったのか、率直な感想と共に記録していく。

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メインライター・香村純子という喜び

皆さんは香村純子という脚本家をご存知だろうか。個人的な見解で紹介させてもらうとすると、「現時点で最も優れた特撮脚本を書くライター」である。

 

炎神戦隊ゴーオンジャー』で初めて特撮脚本に携わった後、これ一本で記事が書けるくらい好きな『海賊戦隊ゴーカイジャー』のライブマン回の執筆、『仮面ライダーウィザード』においてきだつよし氏とのダブルメインライターを経て、『動物戦隊ジュウオウジャー』で初の単独メインライターを務めている。

 

そしてこれはまぁ偶然なのだが、そんな彼女の本格的な戦隊の記憶は『電子戦隊デンジマン』らしい。ちょうど前回取り上げた戦隊である。どうやら仮面ライダーウルトラマンも新作がない時期だったとのことで、これを踏まえると、いわゆる「冬の時代」と呼ばれるような期間にも、未来へ羽ばたく才能の芽吹きがあったとも言える。

 

彼女の書く脚本の持ち味を一言でいうと「うわ〜そう来たか〜!!!」である。

 

この頃の戦隊を脚本という視点から観ると、サプライズがふんだんに盛り込まれていたように思う。物語上の大きな展開を促すものであり、ともすれば作品そのものの評価すら左右しかねない「仕掛け」や「爆弾」を用意して、SNS時代の新たな戦い方を探っていたような、そんな時代であった。

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確かに1年かけて作り上げる作品において、次週も気になって観てもらえたり、Twitterで呟かれたりするようなフックを作ることは重要だ。しかし「それって果たして本当に物語上必要ですか?」「うん、それ知ってた」となる可能性も否めない。早い話が、観る側の考察力が集合知によって磨かれ、チャチな伏線では通用しなくなっていた。

 

香村純子女史の脚本はこの辺りの押し引きが抜群に上手い。分かりきっている伏線をまさかのタイミングで回収してくる。いつ起爆するか分からない緊張感を常に与えられながら、視聴者は次、また次とエピソードを追いかける。

 

サプライズのためのサプライズにならず、展開の推進力として機能させ、そのタイミングをコントロールすることによって心を掴む。自分自身がいち視聴者であるからこその芸当だと思う。

 

戦隊とは「キャラクター」である

もう一つ。香村純子女史の脚本はキャラクターの描写が非常に丁寧だ。今ここで、このキャラが、こういう台詞を言いました。こういう行動を取りました。それって前のあのエピソードでこんなことがあったからです。「コイツならここでこうするだろうな」を裏切ることがない。

 

展開で裏切るにあたって難しいのは、唐突なようにみせないことだ。だから一貫したキャラクター造形がなされ、登場する人物にストレスやノイズが生まれないようにし、視聴者が気づくコンマ5秒前に裏切る。「やられた」という快感となる。

デスガリアン〜破滅をもたらすもの〜

デスガリアン〜破滅をもたらすもの〜

ようやく『動物戦隊ジュウオウジャー』本編の内容に触れる形になって恐縮だが、今作はこれらの描写に余念が無い。一発目の台詞でキャラクターの性格を的確に描写し、掛け合いとして見せることで関係性まで伺わせる。

 

クールで強気、ムードメーカーの熱血漢、不器用な知性派、あざとくてマイペース、素直でネガティブな面々を聖人君子のような優しさで見守るリーダー。これらが織り成す動物たちのコミュケーションによって新たな一面が引き出されたり、コンプレックスやトラウマを克服したりする。

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デンジマン』に影響を受け、『超獣戦隊ライブマン』で培った「関係性の面白さ」を、『動物戦隊ジュウオウジャー』では「繋がり」というテーマで昇華させている。

 

40周年のアニバーサリー戦隊としての歴史の繋がり。人間とジューマン(動物人間みたいなことを想像してくれればよいです)の異なる種族同士が交流することで生まれる繋がり。そして決して断ち切れない血の繋がり。

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それら様々な繋がりが更に繋がってできたのが『動物戦隊ジュウオウジャー』である。今後の記事で言及することになるので先に言うが、同じく女性の特撮脚本家として名を馳せている小林靖子女史の『未来戦隊タイムレンジャー』を彷彿とさせる、非常に上質なキャラクター主導の物語である。

確かなつながり

確かなつながり

後の『宇宙戦隊キュウレンジャー』では初のメンバー9人体制、再びメインライターを務めた『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』では3×3(+1)の対立構造をとることで、キャラクターの旨味を最大限に引き出すための設定、チャレンジが続くことになる。

 

戦隊とは「キャラクター」である。言葉の通じるものが複数集まる、戦隊ならではの強みといえるし、まだ「推し」という概念がアイドル界隈だけのものだった頃に、そのようなマインドを取り込もうとするあたりにも、ビジネス的な先見の明が伺える。

 

「優等生」のジレンマ

このように『動物戦隊ジュウオウジャー』はストレスのないキャラクターたちが繰り広げる上質なドラマによって、アニバーサリーイヤーに相応しい、「スーパー戦隊」というものへの回答もなされたといっても過言ではない、素晴らしい作品であった。

 

しかしなかなかどうして、「傑作」だの「名作」だのという評価が湧き上がっていなかったように感じる。

 

ここに戦隊の、いや、長く続くシリーズとしての最難関とも言えるミッションがあると考える。

 

端的に言えば『動物戦隊ジュウオウジャー』は「優等生」である。大人も唸るドラマを展開したかと思えば、オリジナル能力「野生解放」によってカッコ良さも確保し、ロボは当時の大人気ゲーム『マインクラフト』よろしくキューブが積み重なるかのようなデザインでちびっ子へのアプローチも欠かさず、地球を守るということへの使命感でアニバーサリーイヤー戦隊としての務めをこれ以上ないくらいに果たした。

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しかし、これほどまでに実績を積み上げても尚、卒業した時に思わず涙してしまうのは「問題児」なのである。

 

出来杉くんを指導したというのは先生にとっての誇りにはなるが、野比のび太の卒業を見届けるのは今その時の瞬間最大風速を記録し、居酒屋での語り草になのは彼を廊下に立たせ続けた想い出だろう。この違いである。

 

近年でいえば『爆上戦隊ブンブンジャー』なんかもそうだったが、戦隊における「優等生」はそのまとまりの良さ故に語ることが難しい。「問題児」と違ってキャラのアクがまぁ濃くて〜!とか、このピンクが本編中に3回怪人になって〜!とか言えない。

 

ただ「良い」としか言えない。

 

やんちゃに暴れた『手裏剣戦隊ニンニンジャー』と爆運の『キュウレンジャー』に挟まれた『動物戦隊ジュウオウジャー』だが、なめない方がいい。

 

動物戦隊ジュウオウジャー』は、良い。

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