漫画がアニメ化される時の喜びとは、何だろうか。
私は「音」だと思っている。原作ストーリーに一定数のファンがいるからアニメ化されるんだろうし、ちゃんとした大人が携わっているのならアニオリ展開にも信頼がおける時代になっているんだろうし、作画については制作会社の技量によるところが大きいので素直に喜べるかどうかはギャンブルに近い。
原作の持つ世界観を最大限理解した大人たちの作る曲の数々が、漫画を非・漫画へと変えてくれる。大体の漫画は読者の頭の中で既に動いているから、それを補完し高めてくれる「音」及び「曲」こそがアニメになる喜びだ、というのが私の向き合い方だ。
だから正直、話の内容は覚えてなくてもオープニングは未だにスラスラ歌えるというのがめちゃくちゃ多い。『あたしンち』における『さらば』とか、『ボボボーボ・ボーボボ』における『WILD CHALLENGER』とか、『銀魂』におけるDOESとか、ちょっと上の世代なら『幽★遊★白書』における『微笑みの爆弾』とか。これらは原作も読んでなければアニメも飛び飛びだが、曲なら知っているというものばかりだ。
オープニングがいいアニメは当たる。しばらくはCreepy Nutsがオープニングをやるだけで信頼度が上がる世の中になるだろう。
『NEW WORLD』という曲がある。
オープニングやエンディングではなく、劇中歌という形で披露された楽曲というものがアニメには数多く存在していて、これはそのうちの一曲だ。つまりアニメとして歌唱されたのはその1回しかなく、知らない人が多いかもしれない。
音楽家を担当している、とあるキャラクターがツアーライブをすることになり、その最後の一曲で『NEW WORLD』が歌唱された。アッパーでソウルフル、それでいて少し切なさも感じさせる独特な楽曲となっており、タイトルの通り、新世界への新たな船出をこれでもかと盛り上げる、音楽家の本領発揮と言わんばかりの一幕になっていたのを覚えている。
面白いのは、原作では歌唱シーンはおろか歌詞さえも掲載されず、タイトルとそれに沸く観客たちのコマがちっちゃく存在しているだけだったところだ。
このキャラクターは当時、めちゃくちゃ不遇だった。音楽家として主人公たちの仲間入りを果たしたかと思いきや、あっという間に離散の憂き目に遭い、その後2年の修行を行う羽目になる。強いかどうかもよく知らないのに。
後の冒険で、彼が現世に居続けるためのエネルギーは常人のそれより強く、それによって彼が放つエネルギー(彼はそれを「魂テャマスィー」と呼ぶ)は音楽という芸術を通して人々の魂を強く強く震わせることが分かったから、2年の修行で彼が知ったのは自身の能力の活かし方だった、ということが分かるのだが、その変化を感じられるほどの期間が加入してから離散するまでの間で用意されていなかった。そういうところも含めて、展開の煽りを受けて不遇だったキャラクターの筆頭だと思う。
……いや、もういい。聴いてもらった方が早い。彼の曲は魂テャマスィーに響く。私の言葉なんていらなかったのかもしれない。
いやぁ〜〜〜〜〜っ!!!
最高やねぇ〜〜〜〜!!!
まずもってね、このキャラクターって展開云々じゃなく不遇なワケ。今の船長に拾われる前にも、とある船の船員として旅をしてたんやけど、敵戦との戦いで自分以外死ぬんよ。いや、正確に言えば彼も死ぬんやけど、不思議な力(魂テャマスィー)によって現世に一度だけ復活できる能力を持っとったわけよ。
かつての仲間たちとの別れも泣けるんよなぁ〜。死に際にも音楽好きの奴らが集まって賑やかに合唱するんやけど、一人、また一人と死んでって最後は彼の伴奏だけ残して全滅。
ほんで運が悪いのが海域ね。濃霧に包まれたせいで他の船と出会う確率はゼロに等しく、仲間の亡骸と共に孤独に海を彷徨うこと、実に50年。
50年やで!?!?
発狂するてぇ!!!
そんな中でも正気を保って生き続けていたのは、旅の途中で離れ離れになった友との約束のため。その死んでも仁義を通そうとする意志の強さを買われて、新たに仲間に迎え入れられてさぁ!ようやくその約束を果たすための旅を再開できたと思ったその矢先にさぁ!その後すぐにバラバラにされるとかさぁ!!!!
作者は!鬼か何かか!?
『NEW WORLD』の歌詞見てもらおうかしら。
その手に余りそうな大きすぎる夢
アイツが言えば叶う気がした
Today is the day 待ちくたびれたぜ
気短な俺たちに もう夜はいらない
「待ちくたびれたぜ」て!
50年の孤独に耐え!
ようやく出会えた新たな仲間と旅立つことができたと思ったら!
散り散りにされて2年のお預けを喰らった男が!!
「待ちくたびれたぜ」て!
そんなんで済むわけなくない!?!?
いや、これが済むんだ。これが彼の船長に対する忠誠心の高さを表している言葉としてめちゃくちゃ好き。
自分を始めとする仲間たちのことを「気短な俺たち」と表現しているところも素敵。2年っていう期間を果たして気短な人間は耐えられるでしょうか。答えは否。お前のことだ、何か考えがある。なら待てる。耐えられる。けどな、もうこっちはソワソワしてんだよ。お前とまた冒険できるあの夢のようなワクワクをまた味わいたくてたまらねぇんだ。早くしろ。
そういうことですよね!?!?!?
こういうそれとなく表現される船長への愛と新たな世界への旅立ちを待ちわびてやまない足踏みがソウルフルなサウンドとパワフルな歌声でお出しされてごらんなさい?
盛り上がらん方がウソやでぇ!!!!
ハァ……ハァ……
ずっと、ずーっと好きでいるアニソンの話ができて満足した。この曲もおれのヒーロー。聴いてくれてサンキュな。
