私立アメコミ高校

アメコミに関する様々な授業をしていきます

【天文学③】スーパーマン先生と学ぶ『スーパーマン』シリーズ【後編】

こんにちは!髪を切りに行くタイミングを探り続けて早3,4ヶ月、どうもワキリントです。

 

共感してくださる方いると思うんですけど、ぼくは髪の切り時というのを「シャンプーを何プッシュしたか」で判断するんですね。普段髪が短い方なので、ワンプッシュして泡立ちが悪くなった時が「あ、切りたい」と思うわけです。

 

ところがそこからが大変で、ぼくは美容師さんとの会話があまり得意ではありません。逡巡している内に世はコロナウイルスの第二波が来てしまい、もうにっちもさっちもいかなくなってしまいました。

 

伸びていく毛髪。押され続けるシャンプー。こんなことなら躊躇いなんて捨てればよかったのに。

 

というわけで今回は、時代と共に変わっていった『スーパーマン』シリーズを先生と学んでいく授業の後半戦です。前回の予告通り、今回のスーパーマン先生はちょっと見た目が違います!

 

スーパーマン先生

皆さんこんにちは……グスン……

 

えっ、どうしたんですか先生?

 

スーパーマン先生

いや、その、ワキ君が…まさかぼくを…スーパーマン リターンズ』(2006)のぼくを呼んでくれるって思ってなくて…うわぁぁぁぁぁん!!

 

どのスーパーマン先生もこんな感じで進むのね。

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この時の先生と一緒に進めていくよ!

 

★ヒーローを撮る男、神を撮る男★

まずはスーパーマン リターンズですね。実はぼく、この作品が幼き頃初めて観た先生の作品なんです。そのせいか無意識下に「スーパーマンはこの感じ」って刷り込まれてるんですよね。

 

スーパーマン先生

めっちゃ雛鳥じゃん。さて、そんな今作だけど、ワキ君が観てどうだった?

 

まずは純粋に驚いちゃいました!幼い頃にはリチャード・ドナー監督版を観ていなかったので分からなかったのですが、今作って『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980)のその後を想定した作品なんですよ。

 

スーパーマン先生

実はそうなんだよね。天文学者が故郷のクリプトン星を発見したと聞いて地球を離れたぼくが帰ってきてからの話なんだけど、まさかあそこまでドナー監督版に繋げていたとは思わなかったでしょ?

 

いやホントその通りですよ!それでも刷り込みがあるくらい楽しんだということは、どれほど幼いワキリントが「スーパーマン、かっこえ〜」だけで観ていたかが分かります。あとしれっと『Ⅲ』(1983)以降を無視してるのは笑いました

 

スーパーマン先生

じゃあ、前回の授業で「誠実さ」を推していたけど、今作はどうだった?
歴史を作ったドナー監督版への誠実な態度の結果が精神的続編という形になったと思うんだけど。

 

確かに「安全な乗り物ですよ」のくだりとか、地球に来るまでのゴッドファーザーからの言葉をめちゃくちゃ大事にしたりとか、「迫真性」をその胸に留めて作り上げたドナー監督版を大切に、大切に物語の下地に置いているなぁ、というのはひしひしと感じました。
それだけじゃなく、初登場コミックの表紙をオマージュしたり、「鳥だ!飛行機だ!」の名セリフを無理矢理でも入れこんだりという点も含めて、今作は随所に「スーパーマンへの愛」が散りばめられた作品だと感じました。

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メイキングで担ぎ方まで忠実に指示していたのが印象的でした。

 

スーパーマン先生

X-MEN』シリーズでアメコミ映画には慣れているブライアン・シンガー監督ならではの手つきと言った感じかな?

 

そうかもしれませんね。どれだけレトロな街並みにしても赤青黄の原色スーツを崩さなかったところだけが『X-MEN』シリーズとの違いでしょうか。
ヒーローが抱く、人類とのちょっとしたズレやすれ違いを扱うのが好きなんだなと思いました。いい意味で説教臭くならないんですよね。絶妙なバランスで娯楽のポジションにいる。

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ドナー監督版では絶対にできなかったであろうシーン!青い瞳がまた美しいのよね〜!!

 

スーパーマン先生

では『マン・オブ・スティール』(2013)はどうかな?一応現在進行形のシリーズにはなるんだけど。

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久々に観返しましたけどなかなかに異色でした。スーツの色味が抑えられまくってるのはもちろんのこと、スーパーマン先生のことをまんま「神」として描こうという気満々でしたね。

 

スーパーマン先生

こっちはザック・スナイダー監督がメガホンを取ってるね。一応バットマンVSスーパーマン』(2016)まで観たらしいけど、どうだった?

 

まず圧倒的にスケールがデカくなりましたね。
『リターンズ』も大概でしたけど、『マン・オブ・スティール』以降はそれに輪をかけてデカい。その分キメの画というか、「あぁ〜このショット額縁に飾りてぇ〜」っていうのが沢山ありました。

 

スーパーマン先生

そうなんだ…ぼくにはそういうのあんまりなかったからなぁ…あ、これを機に聞いておこうかな。スナイダー監督といえばスローモーションの多用だけど、ワキ君的にはその辺どう思ってんの?

 

まぁ純粋に「それしか使えねぇのか?」って心配になりますよね。
『マン・オブ・スティール』はクリプトン星人同士の爆速な戦闘があったんで緩急ついてる感じしてあんまり気にならなかったですけど、どうしても「いやそのスローいる?」って気が散っちゃうのはどうにかしてほしい。

 

スーパーマン先生

からスローモーション奪うのはぼくにクリプトナイトぶっ刺すみたいなもんだよ。やめたげてよ。

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「やめたげてぇぇぇぇぇ」

 

バットマンVSスーパーマン』なんて開幕スローでしたからね。笑っちゃったわ。トータル10分は短くできたと思う。
とはいえなんだかんだ「神としてのスーパーマン」を表現するのにスローは効果的だったと思います。

 

★どっちの父親が好き?★

スーパーマン先生

さて、ワキ君って「父と息子」がテーマになると途端に涙腺が緩くなる奇病を患ってるみたいだけど、このシリーズには父親が2人出てくるよね?それに関してはどう思う?

 

遂にその話します?
スーパーマン先生には、生みの親であり地球に送った張本人のジョー=エルさんと、育ての親として先生を人間として見守ったジョナサン・ケントさんがいるんですが、『リターンズ』『マン・オブ・スティール』で重きを置かれていた父親が分かれていたのが印象に残りました。

 

スーパーマン先生

『リターンズ』では生みの親、『マン・オブ・スティール』では育ての親の方がぼく自身の最終的な意思決定に関わってくるよね。

 

ズルい意見なんですがぼくは「あぁ〜どっちも好きぃ〜」となりました。
ドナー監督版を大切にしてた『リターンズ』が意外と育ての親をサクッとポイしてたり、『マン・オブ・スティール』では生みの親が道案内ロボと化してたり、選ばれなかった片方に多少のしこりはあれど、それぞれのキズナが感じられて好きぃ〜、です。

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幼少期の力の描き方も陰陽分かれてて興味深かったですね。

 

スーパーマン先生

キモっ。

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このシーンのためだけに観る価値があると思うのよね。

 

★あのときいなかったスーパーマンを撮る★

スーパーマン先生

だいぶ話してきてなんだけど、シリーズ中でリブートされると比較論的な話になってアレだよね。

 

そうなんだよなぁぁぁぁぁぁぁぁ…
あっちを上げてこっちを下げる、みたいなことはさすがにしないですけど、リブートとなると同じ話をまた観ることになるわけですから、否が応でもチラついちゃうんですよ。

 

スーパーマン先生

そんなワキ君が悲しみを乗り越えて比較してみよう。『スーパーマン リターンズ』と『マン・オブ・スティール』、ドナー監督版と比較して新しいこの2作はワキ君の目にどう映った?

 

アンタ鬼か?
毛色が違うように見えますが、年々スーパーマン先生業を背負ったヒーローとして描かれるようになりましたよね。

 

スーパーマン先生

業?どういうこと?

 

分かりやすく言うとシリアスに傾いてきました。
地球を離れた数年間で変わった世界に戸惑ったり、シンプルに軍から危険分子と見なされたり、「ヒーローって?」というテーマを掘り下げたい感じがします。

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色々観たあとだとショッキングですよ、ここ。

 

スーパーマン先生

ふむ…それって割と最近のアメコミ映画では主流なんじゃないかな?

 

実際そうなんですけど、こうなっちゃった原因って実はもう出てて、9.11の影響なんですよね。
ニューヨークのど真ん中であんな大事件が起こっているのに、ヒーローは現れなかった。現実にはやっぱりいないんだな…じゃあヒーローの存在意義って、なんなんだろう。
その答えを出そうという方向に9.11以降のアメコミ映画はシフトしていきました。

 

スーパーマン先生

うーん、その背景はぼくにだけ影響してるわけではないじゃない?
ぼくを関連づける意味ってなんだろう。

 

やっぱりアメコミヒーローの代表だから、というぼくのエゴによるものが大きいかもしれません。
スーパーマン先生は言葉や力によってではなく、行動で民衆を導く希望の光たりえる唯一の存在なんじゃないかとシリーズを追った結果たどり着いたので、9.11以降の先生の描かれ方というのは他のどんなヒーローよりも意味を持っているのではないでしょうか。

 

スーパーマン先生

なるほど……世界で最初のアメコミヒーローとしての認識と信頼が、あのときいなかった業として強く残っているように思う、と…

 

スーパーマン先生ってどれだけ人類から恩を仇で返されても最後には「救う」のコマンドを選択できる、圧倒的な「善」の人なんですよね。
世界の情勢が不安になったとき、ひときわ先生の高潔さ、輝きが増すように思います。

 

スーパーマン先生

そこまでぼくのことを愛してくれていたなんて…ありがとう…!
ぼく、ぼく頑張るよ!うわぁぁぁぁぁん!!

 

ぼくも頑張って美容師さんとお喋り頑張ります(もう号泣に慣れた)。
さて、2回に渡ってお届けしたクラシック・アメコミヒーローの授業もここまで!
シリーズを制覇する流れの中、過去作を受けての現代版、というように、歴史あるシリーズだからこそ現れる「文脈」が心に響きました。
単体で観るとポカン?な作品でも、「文脈」の中でキラリと光るものが見つけられたりして非常に得るものの多い映画体験になりました!!
それではまた次回の天文学『ロッキー』シリーズでお会いしましょう!
では、ぼくはあっちの電話ボックスに用が…ビューン!!

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パッパパー!!